早や、如月が去って行く
今月は1月末に始まったイェテボリフィルムフェスティバルの流れもあって、映画をよく観た月だった。
映画館に行けないのは淋しいけれど、オンラインというのはこんなに便利で簡単に気兼ねなく自分の部屋で映画が観られる。何て素適なことなんだと改めて思った。
最終の1本は河瀬直美監督の『朝が来る』。子どもに恵まれない夫婦が特別養子縁組みをしてその子を育てるという話。内容はネタバレしないために触れないが、映画に映し出される風景に「ああ、日本だなぁ」と珍しく懐かしい気持ちになった。日差しや自然の風景から匂いまで感じとれる気がした。マンションの部屋の中や主人公の服装など当たり前だが、全てが、ああ日本だなぁと実感したのだ。主人公の女性のほっそりと小柄な感じ、その夫の一生懸命父親になろうとする姿は日本だった。繊細なのだ。動きより先に気持ちを感じることができる。とにかく懐かしい、海外の映画祭で外国人に日本を感じてもらうのに良い映画だったと思う。
フィルムフェスティバルが終わると恐ろしい寒波がやって来た。マイナス20度が連日続き、既存の暖房では間に合わず雪と氷の中おがくずをブロック状に固めた薪の様な物を買いに行って、それを燃やして家を温めたり。
今は2月と思えないほど暖かく、シジュウカラやその他の鳥たちも求愛ソングの時期となっている。
日もだんだん長くなり、高くなるので空も青い。白樺の木もうっすらと先が色付いて、芽吹く用意が始まっている。
春が始まるとテンポが倍速で進むのかと思うくらいに、早くなる。日もますます伸びていく。
春が来て素直に喜べる様に、ワクチンやら何やら頑張ってひと山越えたねと言える日が早くやって来ますように。
血が騒いだひととき
「冬物一気にセール価格から半額ですよ」
「あなただけに70%お引きします、今日だけ」
コロナの影響もあって、服飾店からしょっ中メールが入ってくる。今年は売れなくて大変らしい。ただでさえそんな洋服を買いに行くこともないし、店に入る時は流行チェックのみで財布の紐は締めたまま。さっさと出てくる。
そんな私が1年で一番張り切るセールが、
BOKREA 、本のセールだ。これは国を挙げての年間行事の一つであり、1920年代終わりに始まったという歴史的行事でもある。一時はその売り上げがクリスマス商戦より上回ったというくらい、皆心待ちにしている。
2週間くらい前くらいからカタログが配られ、どの本を買おうか財布と相談しながら書き出していく。
今年はいろいろ様変わりで、国は店に出向かずネットで購入することを推奨。それに乗っ取ってネットでの注文も無事に済ませた。数日で届くらしい。
小さい本屋さんは店に入れる人数が限られるので、事前に予約制にして密を防ぐようだった。何と言っても初日のみ朝7時に開店する。普段なら店の外に行列が出来るほど。
今年は店に行かない。そう決めてネット注文までしたのに、朝になるとそわそわする。
きっとあそこの本屋さんは人が少ないはず、もし多ければ中に入らず帰って来よう。
本屋さんの側のスーパーもチラシを見たら、食べたかった鮭が特価ではないか。鮭を買いに行こう!
そう思って行った本屋さんは、テープが張ってあったり、消毒薬が入り口に置かれていたり。しかしお客さんは3人だった。夕べからチェックしていた本を無事さっさと購入して帰宅。
大満足だ。
早くコロナの切りがついたら 本屋さんのはしごも思いっきり出来るのに。
買った本は色々。
一番読みたいのはレットランドの著者の本。ソビエト下のレットランドが舞台らしい。
料理本も買ったし、美味しいものも作って食べて、読書して。
しばらくは生活が楽しめそうだ。
本日の戦利品。
本屋さんも商売上手。レジ横にこんな可愛い柄のエコバッグがあれば、シジュウカラに惹かれて買ってしまう。
鮭もちゃんと買って来た。
たまには寿司が恋しくなる
私は毎日料理を作る。料理好きだと思われているだろう。確かに料理を作るのは好きだ。しかし、しんどい日もある、作りたくない日もある、もちろん全然アイデアが浮かばない日もある。
それでも作り続けるのは、
①日本の様に気の利いたお惣菜屋さんがない。
デパ地下の何て羨ましいこと。そして定食屋さんでもレストランでもこのご時世、テイクアウトがひしめいているはずだ。お弁当が手軽に買えることの素晴らしさ。スーパーのタイム割引でハイエナショッピングがしたい。お刺身買いたい。お寿司食べたい。
②テイクアウトの種類が少ない。
ピザ主流。中華、タイ、SUSHI があるがそれだけだ。誰が外国で全然違う原材料のSUSHI を結構な値段で買って食べたいだろうか。ピザもたまには美味しいであろうが、積極的に食べようとは思わない。メニューは恐ろしい程の数があるが、皆同じ気がする。
そしてもし買おうと思ってもテイクアウト屋さんまで遠い。時間かけて行って、また帰って来て食べるのであれば、家に留まってパスタでも茹でて何か適当に野菜でもベーコンでも炒めて食べた方が疲れない。
③既成品は味と塩分が濃い
夫は特に、私も塩分やら糖分、脂質などに注意しなければならない世代になった。テイクアウトのピザを買って食べた時、食後喉が渇いて仕方なかった。塩辛いのだ。血圧が急激に上がるのではないかと大袈裟なようだが怖くなった。ピザ用チーズ、ピザ用ハム、どれも100%ではない。チーズが何%で後は粉だったり油だったりで出来ていると知って、買わなくなった。
今日の晩御飯は何にしようか、朝起きて一番に考える。さっさと決まると一日楽しく過ごせるが、なかなか決まってないと憂鬱になる。
いざ、という時のお助けメニューを持っていれば少しは楽になる。にんにく、玉ねぎ、トマトの水煮缶さえあればパスタができる。ベーコン、ソーセージ、ツナ缶などいづれかがあれば上等だ。あとは炒飯。
残り物を全部小さく同じ大きさに切って、炒めればピッティパンナ。
また明日の朝になったら、晩御飯について考えるだろう。生きて元気でいる限り、これは続くのだ。
イーストさえあればピザは手軽にできて美味しい。
酒の力を借りるとは
デンマークへの旅行。毎年恒例でチケットが安くなる時を目掛けて、数ヶ月に一回は行っていた。コロナの為、昨年は夫の誕生日祝いに1度行ったきりとなった。
なぜデンマークが好きなのか。
人が大らかだからだ。スウェーデン人は法に沿って正確に法通りに進む。デンマーク人は法はあってもその時々臨機応変に対応する、という私個人が感じた相違。ええ格好しいのスウェーデン人とこだわりのない自然体のデンマーク人だろうか。ええ格好しいが苦手な夫と私は、自然体の方が伸び伸びするのでデンマークが心地いいのだと思う。まあ、ええやん、が通じる感じ。
そんなデンマーク映画がフィルムフェスティバルで公開された。私の憧れであり、アイドルであるマッツ・ミケルセン主演の映画だ。
タイトルは『Druk』、2020年製作。
日本でも公開されると信じて、ネタバレしないように気をつけながらあらすじに触れると、
4人の40代の高校教師達 、学校では生徒がやる気なく自分もやる気なく惰性で授業。家庭では子育て真っ最中であり、奥さんとまともに会話する時間もない。まさに生活に追われている。
そんな時、体内に0.05%のアルコールを入れれば、丁度良いハイの状態になっていい感じで人とも接することができる、陽気に雄弁になれる、との情報に4人はすっかり取り憑かれ、試すようになる。
そして色々な出来事が起こってくる、というのが簡単な筋だ。
スウェーデンでの評判は、
「デンマークの一つのアルコール文化だ」などと書かれていた。
デンマークはアルコールに寛大だ。以前も記したように、スーパーで簡単にいつでもアルコールは買える。酒売り場には試飲ワインが小さいプラスチックのコップと共に置かれていて、未成年じゃなければ誰でも試飲出来る。酒のセールもある。
だからスウェーデン人は羨ましくてしょうがない。私達は月曜から土曜の午後3時までしか開かない特別な酒屋に行かねばならず、スウェーデン全国いつでもどこでも価格は一切変わらない。セールなんてとんでもない。アルコール税は高いのだ。だからアルコールに関してははお行儀が良いように見せているけど、普段不満が溜まっている分、クリスマス、夏至祭などのハイシーズンは随分とお酒の過ぎる方々も多い。
夫とどちらがシステム的にいいのだろうかと議論したことがあるが、簡単に買えず値段が高いことは一定の抑止力になるが、酒屋に行くということがひと仕事になり、来るのが面倒だからちょっと多めに、と買って短期間で飲んでしまったりすると健康に悪い、などで落ち着いた。私はいつでも買える方がストレスなくいいだろうと思う。余談だが、ノルウェーはもう全く同じワインがスウェーデンの三倍くらいの値段で、それも同様特別な酒屋でしか買えない。国境にはノルウェー人目当てでスウェーデンの酒屋がせっかく大きな店舗に改装したのに、コロナで国境閉鎖となり誰もお客さんがいないような状態もある様だ。
映画の話からすっかりアルコールの話になってしまったが、最後映画に戻るとマッツ・ミケルセンは素晴らしい俳優だと再認識した。あんなにカッコいい、シュッとした男前が、本当に冴えない情けない中年男性を演じることが出来るなんて、上手だなぁとただただ感心。
デンマークの俳優さん達も、デンマーク映画やドラマを日々見ている成果が出て 、お馴染みさんを発見すると嬉しい気持ちになった。
マッツ・ミケルセンの華麗なダンスシーンは必見。手足が長い、スタイルがいい。
とにかく惚れ惚れするほどかっこいい。
4人のおじ様方、
このスーパーでお買い物されていた。
なんだか嬉しい。
鬼と一緒にコロナも飛んでいけ!
あまり実感なく2月が始まった。2月の始まりにふさわしいといっていいのか、大雪だ。昨年はほとんど雪が降らず、暖冬なのかもと呑気なことを言っていたが、そんな心配ご無用とばかりにどんどん雪は降る。
出かけるのが億劫になることは、今の時期いいことだろうから、悪いことばかり考えないようにしよう。
冬は暗いからお裁縫に向かないのが残念だ。今の時期、キルティングで出来たスカートがあれば暖かいだろうなと思ったり。編み物もレッグウォーマーを編めば編んだだけ誰かにあげてしまって手持ちがないから自分の分を編めばいいのに気が乗らない。
フィルムフェスティバルはまだしばらく続き、毎日色々見ては考えさせられる。なかなかまとめてみる機会がないのでこういうちょっと時間制限されながらの期間を与えられると、しんどいけど頑張ってみられる。
映画をきっかけに好きなものが増えたり、新しく調べてみたり、本を読んでみたり、先が広がっていくのも楽しい。
今のところ5本ほどみた。まだ約一週間続くので出来る限りみたい。マッツの作品が1番の楽しみだが、週末にやって来る。
どんな2月になるのだろう。今までのしたい時に何でも出来る気楽な日はいつ戻って来るのだろうか。こんな寒い時こそ人と行き来して、食事やお茶に招待したいのに。
ただ願うばかりの日々だ。
ピザを焼くのも大変だと思わなくなった。
明るい2月を待っている
今日で1月が「やっと」終わるのか、というのが正直な感想。
毎日毎日、自分を奮い立たせて頑張るのもそう続くものでもない。こんな時だから、何かしなければとは思いたくない。変に頑張っても疲れるからだ。
去年からそんなこんなが続いて、今度こそ何とかなるのではに騙されてきた。結局どうにもなってない。緊急事態宣言後も前回は人が減ったと言われたが、今回は皆慣れてしまったのではなかろうか。ワクチンがようやく出来たとまだ普及もしてないのに、もう打った気分の人もいるのではと思ってしまう。
結局何がベストなのか、リーダーは示しきれないし、ついて行く方も生活がかかっている、そして精神的にも限界だ。
昨日"The killing of two lovers" というアメリカ映画を観た。アメリカと聞いて頭に浮かぶのはニューヨーク、西海岸、ディズニーランド、ラスベガスなど華やかなところばかりだ。映画の舞台はユタ州。田舎で閉鎖的な雰囲気で、ニューヨーク等の小綺麗にスーツを着ている感じでは無く、作業着を着た肉体労働者が主役だったし、またその様な人も実際に多いと思う。トランプ支持者がいる事が不思議な気がしていたが、この映像に出てくる街を見て強いアメリカとわめき立て、強引な子どもじみた政策でも指示したい気持ちがわかる気がした。とにかく何か突破口が欲しい、くすぶっていたくない、何かビッグなことをやってみたい。日常に疲れた主人公と家族を見てそう感じた。
これはフィルムフェスティバルで上映されてる映画なので、普段ならあまりみようと思う傾向のものじゃないが、食わず嫌いをやめて見た。
暗い雰囲気が漂う映画だったが、社会の一つの側面を知れたと思う。
映画ではないが、暗くてどんよりしたこの閉塞感が少しでもマシになっていく2月となって欲しい。
文句は言いつつも何事もなく過ごせた1月に感謝して。
焼きたてパンを食べられる、これは大きなしあわせだ!!
ムーミンは決してかわいいだけじゃない
スウェーデン第二の都市イェテボリの大きな催しものの一つである、フィルムフェスティバルが今年も1月29日から始まった。
この催しは1979年から毎年1月最終週から10日間開催されている。世界中から色々な映画がやって来て、特に北欧映画が集結する重要な場所となっている。場所はイェテボリの鉄の広場にあるドローケンという映画館を中心に街中の幾つかの映画館も参加している。
2021年はコロナの影響で映画館での上映は全てキャンセル。フェスティバルの歴史上初のオンライン開催となった。
例年ならば冬の暗い時期の長い夜を映画館をハシゴしながら過ごしたりする。そして鉄の広場周辺の幾つかの通りにはおしゃれなレストラン、カフェ、パブなどがひしめき合っているので、ワインを飲みながら映画の感想を話し合ったり、映画の待ち時間を過ごしたり。このフェスティバルで上映されるものは大箱映画館で上映されるようなものではなく、日本でいう名画座の様なところで上映される映画がほとんどだと思う。小さな会場でひしめき合って観るような時もある。寒い冬になんとなく気持ちも暖かくなる光景だった。しかし今年は全てキャンセルになったので街の様子もいつもとは異なるだろう。でも悪いことばかりではない。デジタル開催もスウェーデン全土の誰でもが自分の場所で映画が楽しめるのだからこれはこれでよかったと思う。まず遠く離れた地域に住んでいるとホテルや食事など準備するものが多い。家から出にくい高齢者や子どもを預けられない夫婦など、そういう条件を越えて、リビングや自室で楽しめる。
そんななかで今年は約70本の映画が出品されていて、日本からも川瀬直美監督の『朝が来る』が含まれている。
ラインナップから私が楽しみにしているのは、フィンランド映画『TOVE 』(2020) とマッツ・ミケルセン主演のデンマーク映画『En runda till 』(2020)、フィンランド映画『AALTO 』(2020)、そして川瀬監督の映画。これらは必ず観て、あとは興味ひかれるのをいくつか楽しみたいと思っている。
早速昨日の初日、『TOVE 』を観た。これはきっと日本でも上映されると思うし、観たいと思われる方も多いはずだ。トーベ・ヤンソン、あのムーミンの生みの親の生涯の1部が描かれているから。ムーミンが大人気の日本で公開されないわけがないと勝手に思っている。ネタバレはしたくないので詳しくは書かない。以下抽象的な文章になると思う。お許し願いたい。
私は子どもの頃からムーミンが好きだったし、チビのミイが大好きだった。アニメーションは楽しくみていたのだが、いざ原作を読むともうひとつ明るい気持ちになれない。アニメーションのムーミンとなんとなく別もののような気がしていた。
キャラクターも皆妖精だから性別もよくわからないし(パパ、ママは明確だが)、年齢も不詳。自由な感じはするがどこか影を感じていたのは私だけだったのか。
どんな異性がタイプかと年頃の時代、友達に聞かれて「スナフキンみたいな人」と言ったら、「あんなワガママにあっちこっち旅して、たまに帰ってきてギター弾きながら歌う様な人がいいの?」と言われて可笑しくなったことを思い出す。
トーベ・ヤンソンの小説も何冊か持っているが、あまり楽しいという印象はない。ムーミンの原作者なのにどうしてだろうかと不思議だった。
その謎がこの映画を観て解けた気がした。ムーミンで非常に親しみを感じつつ寄り添いたいのに、でもなんだかしっかりと心から分かり合えない、ちょっと突き放されていた様なもやもやした感じをなぜ受けていたのだろうという謎が。
その謎が解けて、気持ちが晴れた。これからはじっくり彼女の大人向けの小説にも向き合っていけると思うし、色々と読んでみたい。
そしてここからは諸々の感想。
まず最初、トーベがアトリエを構える時お金もない貧乏画家だったため暖房も、電気のスイッチもないがらんとしただだっ広い空間を大工仕事しながら棚を作ったり、電気のスイッチを自分で設置したり、非常にエネルギーに満ちた姿が清々しく力強さを感じた。
その後その空間が快適な心地よい空間に変わっていく。カーテンや家具、おしゃれな蓄音器、ワイングラスやリキュールグラス、さすがフィンランドでどれも素敵だった。そして友達とのホームパーティーなど、どんどん洗練されていく様子を見るとワクワクした。
そしてトーベのファッションも楽しめる。Alma Pöysti という女優さんがトーベ役だがよく作り込んでいたと思う。ショートカットも可愛いし、ワンピースやサロペットなど、ザ・フィンランド的デザインだった。決してmarimekkoの様な派手な柄ものではないのだが。ロングのコートも合わせている帽子も素敵だった。
そして何より音楽が素晴らしい。1940~1950年代のジャズミュージックが流れる。きっと当時のモダンの象徴だったのだろう。ちょっとシャンソンが流れたシーンもあったと思う。油絵を描く時の上っ張り、私も欲しいなと思ったり。
そしてフィンランド人のアルコール好きは北欧でも有名だが、本当にそうなんだとパーティーシーンでは感じた。
心に残る映画だった。多分時々思い出してまた色々考えることがあると思う。派手なセットやアクションがあるわけではない。人の気持ちだけを淡々と表して作ってある映画が私は本当に好きなんだと再認識させられた。
映画祭終わるまで色々な映画観て、せいぜいこの寒い暗い時期を楽しもう!!
トーベの本も頑張って読む!!!