Mitt lilla kök

北の果て,極少の台所から

重いのだけど柔らかいもの

南部鉄鍋ですき焼き風煮込みを、母が作っていた思い出がある。黒い重い鉄の鍋の中で、白菜、玉ねぎなどの野菜とともに牛肉が糸こんにゃくと共に甘辛く煮込まれて、しょうゆと砂糖や酒のふわっとしたいい香りは今も鮮明に思い出すことが出来る。

その鉄鍋の形は、昔の絵本か童謡の本の挿し絵に出てきそうな、囲炉裏にぶら下げられているあの鍋の形をしていた。木の蓋の下でぐつぐつと煮えている様は秋から冬にかけて見るだけでも暖かくなった。

これが鉄鍋と私の最初の思い出である。

その南部鉄鍋を母は大切に手入れして、使った後は熱いお湯とささらで洗って、水気がすっかりなくなるまで乾かしてから、薄く油をひいてしまっていた。いまでも母はその南部鉄鍋を使っている。

結婚してフライパンが必要になった時に、夫が昔から愛用している鉄のフライパンがあった。コンロも作りが違うし、鉄のフライパンを焦がさず上手く使えるのか不安だったので ある日テフロン加工のフライパンを買って来た。テフロン加工のフライパンはピンクに白の水玉模様の可愛いものだった。喜んで夫に見せると喜ぶかと思いきや、フッと鼻で笑われた。

「鉄のフライパンが一番なのに。」

でもテフロン加工のフライパンは軽いし、目玉焼きもオムレツもさらっと作れて満足していた。

しかししばらくしたら、テフロン加工が少しづつ剥げてきて、底が熱で波うったようになって電気コンロにぴったりと乗らなくなって来た。そうなると熱伝導も綺麗にいかずオムレツもうまくいかなくなった。

仕方がないから鉄のフライパンを思い切って使ってみることにした。母が鉄は熱々にすれば焦げつきにくいと言っていた事を思い出した。そのようにして目玉焼きを焼いた。慣れてしまえば玉子焼きもパンケーキもうまくじんわり通って美味しく焼けるようになった。手入れも洗剤は使わず、熱湯とブラシですすぐだけだ。というわけで鉄鍋とフライパンにますます魅かれていった。

鉄工業はスウェーデンに古くからある産業で鉄製のものをつくるのが得意だ。探せばいろいろと鉄の会社が存在する。その中でもスモーランド地方のSkeppshult(フェップッスフルト)とHusqvarna(ヒュースクヴォーナ)が有名である。

1. 鉄フライパン  Skeppshult 25㎝


f:id:kaalrabbi:20191015013753j:image

夫が長い長い間所有しているフライパン。

私の初Skeppshult。 結婚してからたくさんのパンケーキ、目玉焼き、オムレツ、ベーコン、肉などを焼いてきた。

夫は初めての彼女とツーリングした時に、Skeppshult の工場によってこのフライパンをアウトレットで購入。リュックに詰めて大切に持って帰って来たらしい。夫の武勇伝とともに、使い込まれていい味が出ていると思う。夫の色々な思い出とともにずっと使い続けたい。

 

2. プレットパンナ  26㎝  Husqvarna 


f:id:kaalrabbi:20191015015338j:image

直径8cmくらいの小さな薄いパンケーキが1度に7枚焼けるフライパン。プレッタはパンケーキと同じ生地であるけど、見た目が可愛いちょっとおしゃれな形にして特別感を出したものらしい。そして特別感をより出したい場合はレシピの牛乳を生クリームに替えてコクを出す。子供が特に喜ぶが、大人も大好きだ。


f:id:kaalrabbi:20191015181048j:image

 

3. パンケーキパン あるいはクレープパン      24㎝  Husqvarna 


f:id:kaalrabbi:20191015023101j:image

薄いパンケーキはスウェーデンの国民食の一つだと思う。木曜日は豆スープの日でパンケーキにリンゴンベリーのジャムを添えたものを食べる。子供はおやつによくイチゴやブルーベリーのジャムと一緒に食べる。何枚も焼いたパンケーキの間に生クリームを挟んで上にいちご等を飾ってデコレーションケーキの様にしたり。キノコのホワイトソース和えをパンケーキにぐるぐる巻いて、皿に何本も敷き詰めた上にチーズをかけてオーブンで焼けばご馳走だ。パンケーキは甘いお菓子にもおかずにもなる万能選手。

 

4. 魚およびヒレ肉専用フライパン Skeppshult 縦21,横33㎝


f:id:kaalrabbi:20191015024158j:image

魚もヒレ肉を切らずにまるまま焼ける専用フライパン。このままテーブルに出してもアツアツだし、見た目も面白い。

魚やヒレ肉だけでなく、グラタンを焼くのに使ってもいい。

 

5. グラタン皿  Runneby Ron AB 19 ㎝四方


f:id:kaalrabbi:20191015024700j:image

これは1枚しか我が家にないのでどうやって使おうか非常に悩んだ結果、ちょっと前に流行ったダッチベイビーを作るのに丁度良い。


f:id:kaalrabbi:20191015181230j:image

見えずらいけど、左がこのグラタン皿を使ったダッチベイビー。

6. ムンクパンナ  Skeppshult 22 ㎝


f:id:kaalrabbi:20191015172653j:image

これは上のプレットパンナによく似てるけど、プレットパンナは平べったいがこれは少し高さがある、立体的な形状。

ムンクはスウェーデン語でドーナツのこと。でもこれで作るのはパンケーキの生地でコンロで焼く。油で揚げず中にジャムやヌテラを入れて作る。

でもこれを使った伝統的レシピがデンマークにある。リンゴケーキ。そのリンゴのケーキを作る時 デンマークではこの鉄パンを使う。

私はこれを店で発見した時、まだこっちで暮らし始めたところだった。とても喜んで即決で買って来た。何故北欧にたこ焼き鍋があるのかと不思議だったが、タコはなかなか手に入らないのでイカを買って来て、たこ焼きらしきものを作り、懐かしい気持ちで食べたことを思い出す。

これは決してたこ焼き鍋ではない。でも関西人にはそう見える、そんな鉄パン。

 

鉄鍋、鉄パンは重くて手入れもむつかしいと思われがちだけど、IH にも対応して、キャンプに連れて行っても壊れる心配もなく、一生ものだ。サビたとしても手入れは出来る。調理しながら鉄分もとれるし、熱伝導が安定しているので本当に料理が柔らかい味に仕上がってとても良い。

もっと普及して欲しいと密かに思っている。


f:id:kaalrabbi:20191015181420j:image

これがスモーランド地方にあるSkeppshult の工場。アウトレットも併設している。セカンドラインがお得に買えます。